相談事項 その9

年間110万までの贈与を計画的に使えば、大丈夫なの?


回答: 原則的にはその通りです。けれども注意が必要です。


贈与時における110万円の基礎控除は、制度として認められている以上、否定される根拠はありません。しかし、実務においては、贈与を総体的に判断する等により認められない場合もあるのです。

    

「贈与税の原則的取扱い」

 

贈与税は、原則として贈与を受けたすべての財産に対してかかります。とはいえ、贈与税の計算は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与により取得した財産の価額の合計額から基礎控除額の110万円を控除した残りの額に対して課税されるため、贈与された財産の金額が110万円以内であれば、結果として贈与税は発生しないことになります。

そのため、110万円までの範囲で、財産を毎年妻や子供に贈与することによって、無税で財産の移転を計ることができます。また、継続して行うことによって、一人に対し、10年で1100万円、20年で2200万円と、それなりの金額を贈与することが理論上は可能です。

「贈与税の不思議」

しかし、現在の制度上認められていることであっても、必ずしもそれが是認されるわけではありません。

つまり、毎年継続して贈与を行うことによって、多額の贈与が無税で行うことが出来る反面、それが当初から意図されていた贈与であり、そもそも贈与金額総額で考えるべきだ、という主張が成り立ちうるのです。

毎年110万円という形式で贈与が行われていても、それは総額にして数千万円の贈与を予め企図したもので、贈与税の発生を意図的に回避するために行われたものだと認定されてしまうと、後日、無税どころか多額の贈与税が発生してしまうのです。

現行制度に則り、それを逸脱しない範囲で、上手く活用したとしても、認められない場合があるということに、違和感を覚える方もいらっしゃることと思います。それに、そもそも財産を分割で、贈与するという契約でもない限り、毎年行われている贈与が、民法上の法的要件を満たし、有効に成立しているものであった場合、それを否定する根拠はどこにあるのだろうか、という疑問が湧き上がります。

けれども、実務上は、継続して行われた贈与を連年贈与と呼び、その妥当性について、調査・検討がなされています。そのため、その対策として、個々の贈与について契約書を作成し、加えて公証人役場の認証を得て万全を期す、などが考えられております。

贈与の度に契約書を作成するなど、手間暇かけていられない、という方もいらっしゃるかもしれませんが、その分税務リスクが高まっているのだということを、胸に留めて頂ければと思います。

安易な贈与には注意しなければなりません。

BACK!